一般財団法人大阪湾ベイエリア開発推進機構
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広報誌『O-BAY』
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特集 神戸ポートアイランドの動向~「神戸医療産業都市構想」と「次世代スーパーコンピュータ」の進捗状況について~
神戸ポートアイランドにおいては、国の将来を担うであろう2つの大きな国家的プロジェクトがある。神戸市が進める「神戸医療産業都市構想」と国と(独)理化学研究所で進めている「次世代スーパーコンピュータ」だ。
構想から11年が経過した「神戸医療産業都市構想」の現状と、平成24年の完成を目指している「次世代スーパーコンピュータ」について取り上げる。
資料提供協力:神戸市企画調整局医療産業都市構想推進室
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神戸医療産業都市構想の経緯
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神戸医療産業都市構想(以下「構想」という)は、阪神・淡路大震災からの本格的な経済復興を目指したプロジェクトである。平成10年10月に座長:井村裕夫氏(先端医療振興財団理事長(当時の神戸市立中央市民病院長))を中心に、京都大学、大阪大学、神戸大学の医学部長や国立循環器病センター総長、さらに神戸市医師会や兵庫県が参画した「神戸医療産業都市構想懇談会」を設置し、具体化が始まった。
平成11年3月に、この懇談会で報告書が取りまとめられた。その中で、構想において推進を図る分野として「医薬品等の臨床研究支援」「画像診断機器などの医療機器の開発」「細胞治療・遺伝子治療」の3つが掲げられるとともに、構想の実現すべき中核機能として、新たな医療の実用化に向けた臨床研究を行う「先端医療センター機能」、企業の医療分野への参入や起業化の支援を行う「メディカルビジネスサポートセンター機能」、医療関連の人材を育成する「トレーニングセンター機能」の3つが提案された。
同年8月には、200社以上の企業等が参画し、産学官により構想の早期具体化を推進する「神戸医療産業都市構想研究会」(井村裕夫会長)が設置され、同年12月には政府補正予算で経済産業省の「先端医療センター」と文部科学省の理化学研究所「発生・再生科学総合研究センター」が事業化されることとなった。
構想の基本的なコンセプトは、基礎医学の成果を効率的に臨床に移して医療に貢献するための研究施設を整備し、先端的な医療を市民に提供するとともに新産業を創出する、というものである。構想から11年が経過した現在、ポートアイランド2期では、神戸臨床研究情報センターをはじめ臨床への橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)を推進するために必要な中核施設が順次整備されてきている(図1)。それらの周りには162社(平成21年12月末現在)の医療関連企業等が進出し、世界でも最先端の先端医療やライフサイエンスの研究や企業活動が行われている。また、この構想の中で生まれた研究成果を市民の健康の維持に役立てるべく、「健康を楽しむまちづくり」の様々な取り組みも行われている。
構想による市内での経済効果は、平成17年度末で409億円(税収効果12~13億円、雇用2,690人)と推計されている。
図1 中核施設配置図
神戸医療産業都市 中核施設配置図
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「神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン」の策定
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構想は平成10年度に懇談会で基本的な枠組みが提案されて以来、早期に具体化され、着実に成果を上げているが、現在では構想を取り巻く環境は大きく変化している。
先端医療センター隣接地に平成23年春の開院を目指して新中央市民病院整備事業が進められているほか、平成18年2月に神戸空港の開港やポートライナーの延伸が実現し、平成19年4月には、ポートアイランドに新たな大学の進出が始まった。
一方、国においては、平成13年度から経済産業省の「産業クラスター計画」や平成14年度から文部科学省の「知的クラスター創成事業」などの地域におけるクラスター形成が支援され、産学連携を推進する大学知的財産本部の設置や国立大学の法人化などが推進された。また世界でも、医薬品や医療機器開発の国際化の動きや、アメリカだけでなくヨーロッパやアジアにおけるバイオクラスターの発展などがあり、神戸としても、これまでの取り組みを検証するとともに、新たなクラスター戦略を検討する必要が生じてきた。
こうした状況の変化に対応すべく、平成17年8月に先端医療振興財団井村理事長を座長として、大学及び研究機関、医療関係者、産業界、行政の参画により「神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議」を設置し、①クラスター形成の目標である10年後、20年後のグランドデザイン、②新たな研究・技術開発の推進方策、③持続的な推進を支える仕組みづくり、の3つのワーキングに分かれてクラスター形成戦略の検討を行い、併せて、構想により実現したクラスターの市内経済に与える定量的、定性的な効果について検証を行った。その結果として、平成19年3月に「神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン」が策定された。
このビジョンにおいて、構想の今後の目標として謳われているのが「メディカルイノベーション」の実現である。すなわち、基礎研究の成果を臨床に展開するトランスレーショナルリサーチを一層推進するとともに、それを産業化に結び付けて成果を挙げる取り組みをさらに強化する。一方でそれらの成果をより迅速に臨床に生かしていくために高度専門病院群よりなるメディカルクラスターをポートアイランドに整備し、最先端の医療を市民に提供する。また研究の成果を市民の健康の増進に役立てるための取り組みを進め、健康な 長寿を多くの人が享受できるようにする、というものである(図2)。
図2 神戸における今後のクラスター形成戦略
神戸における今後のクラスター形成戦略
出典:『神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン』
(神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議、平成19年3月)
このようにトランスレーショナルリサーチの成果を、高度医療サービスや科学的な健康予防としてできるだけ早く患者や市民に届けることがメディカルイノベーションであり、その仕組みを企業や市民の参画により構築することによって雇用が創出され、経済的な効果も上がり、更に新しい研究へ投資できるようになる。それを実現するためには研究の振興、メディカルクラスターの整備、産学連携の推進とそれに関わる人材の育成、国内の他の地域や国際的な連携の強化などなすべき課題は多い。
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神戸クラスターの将来像について
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構想は、阪神・淡路大震災からの神戸経済の復興、さらには、新しい神戸の創造を目指して始まった取り組みであるが、今や日本で初めてのライフサイエンス分野のクラスター形成を目指す国家的プロジェクトとして推進されており、将来は、関西地域での国際的な スーパークラスターの形成を目指している。
21世紀の日本は未曽有の高齢化社会を迎え、高齢者の健康を守り、適切な医療を行うことは重要な国家的課題となる。「神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン」の実現により、こうした時代のニーズに対応し社会に貢献することが期待される。
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次世代スーパーコンピュータ
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次世代スーパーコンピュータ(以下「次世代スパコン」という)は、科学技術基本法に基づき平成18年3月に策定された「第3期科学技術基本計画」において国家的な大規模プロジェクトとして集中的に投資すべき「国家基幹技術」として位置づけられた世界最先端・最高性能を目指す計算機システムだ。
次世代スパコン工事中(平成21年12月) 平成19年3月、神戸ポートアイランド第2期に立地が決定し、平成24年の完成を目指して、理化学研究所によって整備が進められている。
稼働後は、10ペタフロップス(1秒間に1京(ケイ)回)の計算処理性能を駆使したシミュレーションにより、ライフサイエンス、ナノテクノロジー、ものづくり、地球環境・防災、航空・宇宙、天文物理など様々な分野で、最先端の科学研究から産業利用まで支える、我が国の科学技術及び産業競争力の重要なインフラとして大きく期待されている。
次世代スパコンの整備・利用によって、これまで明らかにできなかった自然現象の解明が可能となり、新たな分野や最先端技術の研究開発を他国に先駆けて推進することができるようになる。また、次世代エネルギー利用を可能とするシミュレーションや、気候変動や集中豪雨の高精度な予測など、一般市民生活の向上にも大きく貢献することが想定されている。ライフサイエンス分野においては、医療産業都市構想の中核施設と次世代スパコンとの連携により、革新的な創薬や新しい医療技術の開発が期待されている。また、産業界においては、新たな製品・技術の開発や、企業の研究開発期間・コストの低減が期待され、国際競争力の強化が見込まれている。
次世代スパコン完成イメージ図 出典:(独)理化学研究所 次世代スパコンの隣接地には、兵庫県・神戸市及び神戸商工会議所が共同で設立した計算科学振興財団(理事長:秋山喜久 関西広域機構会長)が、その拠点として高度計算科学研究支援センター(仮称)を設置し、市内企業をはじめとする民間企業等の次世代スパコン利用に関する技術支援を行うとともに、一般市民に対する普及啓発活動を実施する。また、次世代スパコンを中核とする研究教育拠点(COE)の形成も既に進んでおり、隣接地においては、甲南大学が平成21年4月に開学し、今後、神戸大学、並びに兵庫県立大学が新しい研究科や研究拠点を設置し、次世代スパコンを利活用して、計算科学の最先端の人材育成が行われることになる。
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大阪湾ベイエリアで実りつつある新産業を成長させるために
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上述のとおり、大阪湾ベイエリアのこの地域では、関連する企業の進出や、大学との共同開発など連携強化の動きも見受けられ、新たな産業拠点が着実に形成されつつある。次世代スパコンに係る来年度の国家予算(案)については、事業仕分けで厳しい結果となり、40億円減の228億円が計上されることとなった。資源が少ない日本としては、世界をリードする産業・科学技術の成長を推進していくことが不可欠である。目の前の利益だけでなく長期的な展望・ビジョンを国は決定し、関西の関係者は府県を越えさらに連携し、関西の未来を考えなければならない。
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