関空の現状と第2滑走路オープンのメリット |
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【充実した航空ネットワーク】
関空の2007年夏ダイヤの国際線は、週782便と予定を上回り過去最高の運航便数を記録した。アジア方面を中心に、中東、欧米、オセアニア等、世界の約70都市と結ばれるなど、国際線ネットワークが充実している。
特に、経済成長が著しく、我が国にとって最大の貿易相手国である中国との間においては、旅客便(貨客便)が国内空港で最多となる中国16都市(9月末時点)と直行便で結ばれ、週221便が運航している。貨物専用便においては、週約100便が運航し、都市数・便数共に我が国の空港で最も充実した中国線ネットワークを誇る。
国内主要都市へのネットワークも充実しており、特に首都圏(羽田)との間では便数も多く、また、9月からの㈱スターフライヤーの新たな就航により、1日19便が往復している。同一ターミナルビル内での上下移動のみと、乗り継ぎの利便性が高いため、全国から、また、「羽田-関空-海外」のルートの活用により、首都圏の国際線需要を補完する役割も果たしている。
第2滑走路のオープンにより、これまで満杯であった朝夕のピーク時の発着枠が増加し、こうした時間帯にも新たな便の受け入れが可能となった。完全24時間化と併せて、こうした利点をPRしながら、より一層の誘致活動に取り組む必要がある。
【国際貨物ハブ空港として】
豊富な航空ネットワークを備える関空は、最適な物流システムの構築を支える空港としての活用が期待されている。海上空港であるため、騒音問題や夜間乗入制限がなく、深夜・早朝便の設定など最適物流を実現する、自由なダイヤ設定が可能である。
また、関西、西日本という巨大な後背需要圏を抱え、さらに、国際線と国内線の双方が就航できるため、首都圏を始め、全国からの航空貨物も集約できる空港であり、日本全体のための航空物流拠点機能を担うことが可能となっている。
国際貨物ハブ空港を目指す関空にとって、4,000mの第2滑走路がオープンし、完全24時間運用となったメリットは大きく、世界の物流拠点として今後の成長が期待されている。
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商業施設の充実や顧客満足度向上のための取り組み |
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関空は、収入全体の55%を非航空系(商業系)が占めており、さらに免税店、ホテル、飲食店、物販店などの魅力ある商業施設の充実を随時図っている。昨年7月に、テーマ性をもったダイニングコート「町家小路」がオープンし、また、本年3月には、日本初となる24時間営業のネットカフェを併設した空港ラウンジを設けるなど、ニーズに応じた施設展開を実施している。また、「来て見て楽しい空港づくり」の見地から、地元関係団体との連携の下に各種のイベントを開催し、賑わい創出にも努力している。
さらに、顧客満足度ナンバーワンの空港を目指すため、関空会社内に「CS推進センター」を設置し、お客様の声に基づき、空港の安全性、利便性、快適性を高める各種の取り組みに力を入れている。また、空港全体でも、「関西空港CS向上協議会」を設置し、空港内のあらゆる事業者が連携してサービス向上に努めている。この結果、空港の清潔さ、入国手続きのスムーズさ等により、英国の調査会社スカイ・トラックス社による世界の空港ランキングで4年連続ベスト10入りするなど、世界的にも高い評価を得ている。 |
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関空・りんくうエリアとしての発展 |
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関空の対岸のりんくうタウンの発展はめざましく、大きな集客力をもつ「りんくうプレミアム・アウトレット」を始め、巨大なショッピングセンターや家電量販店、大型家具店が進出し、今年の冬には温浴施設や観覧車を備えた家族みんなが楽しめるエンターテインメント複合施設「りんくうプレジャータウンSEACLE(シークル)」がオープンする予定となっている。また、航空保安大学校や大阪府立大学生命環境科学部獣医学系の学舎を誘致するなど、人・物の交流が活性化し、関空と一帯となりますます賑いのあるエリアに発展していくと思われる。 |
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2期計画案 |
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第2滑走路のオープンは、離着陸に必要な最小限の施設のみを整備する「限定供用」であり、4000mの滑走路と南側連絡誘導路のみの供用となっている。
関空会社が、今年6月に2期計画案を発表し、2期空港島における今後の計画についての見解を示した。需要の伸びの著しい国際貨物については、2期での国際貨物地区を拡大し、旅客ターミナルビルについては、需要動向に応じた柔軟な対応が可能となるような計画としている。特に、1期空港島の国際貨物地区が満杯の状況にあることから、2期空港島での貨物施設の展開は急務である。(下記図参照) |
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関空の最大活用を図っていく上での課題など |
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今後、政府がとりまとめた「アジア・ゲートウェイ構想※」の中核空港として、関空がその機能やポテンシャルを十分に発揮していくためには、関空の高コスト構造の是正(内外の空港との競争条件の整備)が大きな課題となっている。
関空は、伊丹空港の騒音問題の抜本的解消を図るため、海上空港として、大阪湾の沖合5㎞の大水深を埋め立てて建設されたため、土地の造成、連絡橋の建設等に膨大な初期投資を要し、しかも大半を有利子負債で賄ったため、これが着陸料などの空港施設の使用料金に反映され、高コストのかかる仕組みの空港となっている。
関空会社では、収入拡大、経費削減のための様々な取り組みを通じて、平成16年度から経常ベースで黒字に転じており、また、有利子負債も着実に減少しているものの、なお、1兆円以上の残高を抱えるなど、自助努力での使用料金引き下げにも限界があるのが現状である。
また、阪神高速道路㈱から公表された、距離別料金制への移行に伴う第1次案では、関空からは、ほとんどの地点で料金が高く設定されている。これは、「アジア・ゲートウェイ構想」や、国土交通省がとりまとめた「交通政策審議会航空分科会答申」に盛り込まれた、関空のアクセス改善による国際競争力強化という考えに逆行するものである。新料金制への移行が実施されれば、特に物流業者や輸送業者への料金加算となる改正案は、物流ネットワーク拡充に大きな影響を及ぼすものと懸念される。
※ アジア・ゲートウェイ構想
平成19年5月にとりまとめられた日本が魅力ある国となるために必要な政策を掲げたもの。経済成長が著しいアジア各国と積極的に交流を図り、日本の役割や地位を高めようとする試み(航空自由化、大都市国際空港24時間化、通関等手続きの簡素化ほか)
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おわりに |
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大阪湾ベイエリアの重要な拠点である関空は、第2滑走路のオープンを契機に、完全24時間空港として、また、「アジア・ゲートウェイ空港」として、新しい飛躍の時期を迎えようとしている。関西の経済界、地元自治体は、利用促進運動や、路線拡充を働きかける活動を強化しており、また、関空会社も収益基盤強化のために貨物便の誘致を積極化している。こうした努力により、就航便数の増加や新規路線の獲得が図られたとしても、航空会社に採算に合うだけの利用が伴わなければ一時的なものに終わることとなる。そのためには、陸、海、空を含めたインフラ整備と観光客などをひきつけるオール関西としての魅力作りとともに、さらなる関空の活用が、是非とも必要と思われる。人流・物流の拡大を通じて、大阪湾を取り巻く関西全体としての地域の活性化、産業・経済の国際競争力の強化に結びつくよう、官民が協力して支援体制を強化するべきである。 |
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(2007年秋号) |
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