一般財団法人大阪湾ベイエリア開発推進機構
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広報誌『O-BAY』
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特集 大阪湾ベイエリアにおける企業誘致


景気拡大期間が「いざなぎ景気」を超え戦後最長となったといわれる中で、大阪湾ベイエリアにおいて、ようやく企業の動きが活発化してきた。大阪港周辺では巨大な物流倉庫の基地が誕生、また、堺市、尼崎市の臨海部では企業の活発な動きが見られ、長年懸案であった未利用地の有効利用も進みつつある。そこで、大阪湾ベイエリアにおける自治体の企業誘致の動きと、それに伴う企業の動向を追う。



産業集積の経緯

  大阪湾ベイエリアは、高度経済成長期に重化学工業を中心とした産業集積が進み、戦後の日本経済発展に重要な役割を担ってきた。しかしながら、大都市圏での環境汚染など大きな社会問題も発生したことにより、産業と人口の過度の集中防止と都市環境の改善を目的とした工場等制限法が生まれることになる。
  1970年代に施行された工業再配置促進法と工場立地法を合わせた、いわゆる「工場三法」で、一定規模以上の工場の臨海部における指定された地域での立地が難しくなった。この結果、工場が大阪湾ベイエリアから転出することになる。
  また、1985年のプラザ合意による円高以降、関西の企業が中国を中心とする海外へその生産拠点を移したことや産業構造の変化に伴い、大阪湾ベイエリアには低・未利用地が出現することになった。
  さらに、その後、バブル経済が崩壊し、大阪湾ベイエリアの経済は、長期的な停滞ムードに覆われることになる。しかしながらここにきて、関空二期事業や神戸空港の開港をはじめとする基盤整備が進められ、大阪湾ベイエリアをあらたに環境保全、高次産業、文化・交流エリアとの位置づけが芽生えてきた。加えてこの大きな転機となったのが「工場三法」の廃止や緩和であり、さらに日本への工場回帰の後押しも受けて大阪湾ベイエリアへの企業誘致促進の機運が高まったのである。当然、企業誘致を進める自治体にとっても、支援策等の拡充が求められた。

大阪湾ベイエリア自治体の企業誘致策 


  自治体における企業誘致策は、企業誘致に向けた自治体の積極的な姿勢を明確に示すとともに、工業用水や道路などのインフラ整備や優秀な人材の確保、さらに税の優遇や補助金の交付などがあげられる。 このような中で、各自治体が財源の確保を念頭に地域経済の活性化を目指し、産業の集積、創出に取組んでおり、その結果として、企業誘致に地域間競争が展開されている。特に、最近は、補助金が高額化している状況にある。

優遇措置の概要(臨海部に関する主なもの)

企業進出の現状


  最近の大阪湾ベイエリアへの代表的な企業進出の状況は、次のとおりである。

■尼崎市 (松下プラズマディスプレイパネル(PDP)工場)

  尼崎市の臨海部においては、2005年9月に松下電器産業(株)と東レ(株)の合弁会社である松下プラズマディスプレイ(株)が、「プラズマディスプレイパネル(PDP)第3工場」を完成(第1・2工場は大阪府茨木市で稼働中)させ、本格的生産を開始している。現在は生産能力拡大のため、その隣接地において生産拠点としては世界最大の「PDP第4工場」の建設も進んでいる。また、2007年1月には、世界最大の量産体制をさらに拡大するため、近接地にて第5工場の建設計画も発表されたところである。
  2004年5月に、プラズマパネル工場建設が公表されて以降、戦後の経済復興を支えてきた発電所跡地にリーディング産業と期待される企業の立地が現実となった。企業が新規立地を検討するにあたり、交通の利便性やインフラ整備を重要視することから、尼崎市は工業用水や交通アクセスなどの産業基盤の整備、さらには兵庫県が進める自然と産業が共生する「尼崎21世紀の森構想」などを併せて立地優位性を積極的にアピールした。さらに兵庫県は優遇措置の拡充を図り、尼崎市も企業立地促進条例を制定したことなどで、多くの諸条件がクリアされたことが進出決定の理由と推測される。
  また、「松下プラズマディスプレイ(株)尼崎工場」の北側周辺では、産業の育成・支援拠点の整備が進められ、現在、兵庫県企業庁・尼崎市が分譲を行っている。

最近の大阪湾ベイエリアへの主な投資
最近の大阪湾ベイエリアへの主な投資

■大阪市住之江区平林北地区(旭硝子工場)
  2006年6月、大阪府が産業集積促進地域に指定した大阪市住之江区平林北地区の関西電力(株)大阪発電所跡地に、旭硝子(株)が工場建設を決定した。
  旭硝子は成長著しいガラス基板生産のうち、PDPでは世界の約80%、TFT(液晶用ガラス)で約30%を占めるわが国有数の先端電子材料分野のリーディング企業である。同社ではPDP用のガラス基板の加工を行う予定とともに、その更なる需要拡大および大型化に対応するとのことである。この地に進出が決まったのは、大阪府・大阪市からの積極的なアプローチがあったことや、企業の迅速な投資に十分対応できるインフラなどの優れた立地環境、また大阪府・大阪市の適切なワンストップサービスやインセンティブ等が評価されたことによる。

■堺市臨海部
  堺市臨海部では、新日本製鐵(株)の高炉跡地である堺浜の「都市再生緊急整備地域」の指定による大型商業施設を核とした「堺浜シーサイドステージ」のオープンや、臨海部の企業立地が進み、当該エリアに活力を取り戻す事例が生まれつつある。
  堺市は製造業をはじめとする産業集積に厚みをもたせて維持発展を目指し、2005年4月には国内最大級の税の優遇策である「企業立地促進条例」を施行。さらに2006年4月には、緑地率の規制緩和による既存工場の立地促進等を図るため、「工場立地法地域準則条例」を関西で初めて施行し、企業の投資を促している。
  「企業立地促進条例」では、臨海部の工業用地に進出する企業に対して固定資産税や事業所税を減免するもので、投資額600億円以上の場合で5分の4を、300億円以上の場合で3分の2を、10年間にわたり軽減する。
  「工場立地法地域準則条例」は、工場建設時に企業に課される緑地規制を緩和する。現在の工場立地法では、工場を新たに建設したり、増設したりする際、敷地面積の25%を緑地等として確保することを事業主に義務付けているが、この条例では工業地域で15%、準工業地域で20%までその制限を緩和している。

■神戸市ポートアイランド第2期地区
  ポートアイランド第2期は、神戸のリーディングプロジェクトの中核地として注目が集まっている。
  神戸市では、今後大きな成長が見込まれる医療関連産業の振興を狙い、「神戸医療産業都市構想」を街づくりの核として掲げている。ポートアイランド第2期を中心に最先端の医療技術の研究開発の場を整備し、国内外の医療関連産業を集積、新しいビジネスが生み出される環境づくりを目指している。すでに先端医療センター、理化学研究所、発生・再生科学総合研究センターなどの中核施設が相次いで完成しており、世界から関連産業が集まり医療技術開発のクラスターづくりが積極的に進められている。現在100社が進出、または進出決定しており、今後の最先端医療の研究・開発を担う拠点としての活躍が大いに期待される。
  また、企業誘致の推進の一助として「神戸エンタープライズゾーン条例」が制定され、市税の軽減等を行うことにより、持続的な成長が見込まれる産業分野や集客力の抜本的な強化に寄与する産業分野の集積を促進することで、経済の発展を目指している。

今後の取り組み

  シャープ(株)は、企業活動がグローバル化し、世界規模で生産・研究活動が展開される状況下で、大型液晶パネルの工場建設地を外国と比較した上で国内に決め、三重県亀山市に工場建設したことで、大きな注目を集めた。
  このことにより、各自治体は「海外競争力のある付加価値の高い製品などは、国内でも大規模な工場を建設する」との認識から、対象企業への誘致を行い、地域の企業との事業連携などにより、経済的な相乗効果を高めたいと考えるようになった。
  しかしながら、ここにきて、大阪府内への大手薬品会社の研究所誘致の不調により、企業誘致は多額の補助金だけではなく、長期的な視野に立っての企業誘致そしてそのための人材が集まる基盤の「質」を高める努力をすべきではないか、との意見も出てきている。
  大阪、兵庫などの大阪湾ベイエリアの自治体が、これまで持っていた地域の独自性を発揮するとともに、企業誘致においても各自治体の枠を超えた魅力のある地域づくりを目指し、広域連携の強化を図ることが、強く望まれている。

(2007年冬号)

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