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特集 首都機能代替(バックアップ)エリア構想~日本の国土形成に必要な役割を果たす~


京都府、大阪府、兵庫県は、首都が災害等により大きな被害を受けた場合に、関西が有する豊富な都市インフラ・既存の施設を活用して首都機能バックアップの役割を担うべきことを国に提言している。
今年7月には関西の果たし得る首都中枢機能のバックアップの役割について、3府県で構成する「関西首都機能代替(バックアップ)エリア構想連絡会議」が、問題提起を中心に中間とりまとめを行ったので、その概要についてお聞きした。



首都圏のバックアップの必要性

  近年、新潟県中越地震やスマトラ沖地震による大津波、ニューオーリンズの大洪水など世界各地で様々な災害が発生し、大きな被害が発生しています。
  もし、首都東京がこうした大災害等に見舞われたら…。首都圏は沢山の人口を抱えるだけでなく、政府機関や国会、銀行、企業の本社等の我が国の政治・行政・経済の中枢機能が集中して立地しています。こうした集中は世界にも類を見ないものであり、一たび災害が発生し、首都中枢機能に麻痺が生じた場合、その影響は、首都圏域だけではなく我が国内外へ波及し、世界経済に多大な影響を与えるとともに、我が国の国民一人ひとりの生活にも大きな支障が生じることになります。
  ミュンヘンの再保険会社の世界主要都市の災害リスク指数によると、東京は自然災害リスクが世界で一番高い都市となっています。こうした世界的な評価は、我が国への投資や信頼性の低下につながることになり、大きな損失であるといえます。
  このような状況のもと、首都にいかなる事態が発生しようとも、首都中枢機能が継続して保持できるよう、あらゆる措置を講じておくことが国家の危機管理として急務であるのではないでしょうか。
  首都において中枢機能が確保できるよう、耐震化など防災対策上の取り組みを進めることはもちろん必要ですが、万が一の場合には、首都以外の地域でバックアップを行う仕組みを一刻も早く構築する必要があります。
  幾重にも精緻なバックアップの仕組みを持つことにより、首都中枢機能の継続性が確固たるものとなり、我が国に対する内外からの信頼・安心感を飛躍的に高めることに繋がります。

《東京の災害リスクは世界一》
ミュンヘン再保険会社の災害リスク指数
出典:中央防災会議首都直下地震対策専門調査会
(第18回)提出資料

首都圏以外でのバックアップの必要性


(1)災害や非常事態には「想定外」もあり得る

  平成17年9月、中央防災会議は「首都直下地震対策大綱」をまとめました。これは首都が被災した場合の首都中枢機能の機能継続方策を定めたものです。
  しかしながら、災害その他の非常事態については、想定外の事態や想定の範囲を超える被害が発生する可能性を否定できません。また、地震だけでなく、大洪水や火山噴火などの自然災害や大停電、テロ、さらに、国民保護計画で想定する武力攻撃事態など、発生すれば首都機能に致命的なダメージを与え得る事案も存在します。
  首都中枢機能を継続させるためには、当然ながら発生の蓋然性が高いと想定される事態への対策を十分講じつつ、これに加え、万が一、想定外のことが発生した場合にも、混乱なく対応できるように準備しておく必要があります。

(2)現状の対策で首都中枢機能の継続は十分可能か

  首相官邸や霞ヶ関の庁舎については耐震化・防災化が順次進められており、また、これらの施設の被災時に代替拠点となる首都圏内の施設との距離も相当程度離れているため、これらが同時に被災し、機能を失う可能性はほとんどないと考えられています。
  しかし、これらの拠点を活用することだけで、首都が被災した場合に首都中枢機能の全ての機能の継続は可能でしょうか。面的に被害が発生した場合には、都市としての機能や行政システムを従前どおり発揮するのは困難と予想されます。
  また、全ての重要な機能を首都圏で早急に復旧して担うことができると判断するのは必ずしも現実的ではありません。阪神・淡路大震災では、被災地のライフラインの復旧には、電気が6日、水道が42日、JR・地下鉄が2か月、高速道路に至っては7か月を要していることから、多くの機能が長期間機能停止となることが想定されます。
  首都中枢機能が部分的に不全となった場合においても、一定の機能を首都圏以外の場所でバックアップすることにより、国民生活・国際社会に支障が生じないよう対応していかなくてはなりません。

バックアップのイメージ(例示)
バックアップのイメージ(例示)

(3)首都圏以外でのバックアップを検討すべき

  こうした2つの観点から、首都圏の中で首都中枢機能のバックアップの全てを対応しようと考えるのではなく、万が一の場合に備えて、首都圏以外の地域で、しかも代替可能な資源を多く持つ地域においてバックアップ体制を確立することにより、余裕のある有効な方策となり得るものと考えられます。
首都圏以外でのバックアップイメージ
首都圏以外でのバックアップのイメージ

関西こそが首都中枢機能をバックアップできるエリア


(1) 首都中枢機能のバックアップが可能となる地域の条件

  バックアップ機能を首都圏以外の地域に整備するにあたっては、まず、その地域が首都圏と同時被災しない距離に位置し、首都圏並びに全国各地を結ぶ交通輸送手段や情報通信手段が整備されている必要があります。
  また、首都のバックアップに必要な機能全てを新たに整備するという方法もありますが、昨今の厳しい政府の財政状況のもと、有事のためだけに普段は稼動しない施設を新たに整備することは費用対効果の面で疑問があります。今すぐの緊急事態にも対応できるよう、その整備は早急に行う必要があるので、既存の施設をできるかぎり活用し、バックアップのシステムを構築する方が時代の要請に適っているものと考えられます。
  さらに、首都中枢機能は互いに密接に関連していることから、バックアップのための施設は、全国に分散配置するのではなく、一定の地域・都市圏の中で、機能的に連携・連絡できることが望まれます。そのため、代替可能な施設・機能が集積している都市圏で対応すべきです。
  それとともに、いざという場合に代替施設(機能)において事務・作業を行う要員の確保についても、国支分部局の職員だけでなく、地元自治体はじめ官民あげての積極的な協力、応援体制が得られることが必要です。

(2)首都被災時に対応する関西のポテンシャル

  以上の条件を満たし、首都中枢機能のバックアップ機能を担うのに最適な都市圏は、関西をおいて他にはありません。
  関西は首都圏に次ぐ経済規模を有し、地理的にも西日本の中心として、わが国の発展に貢献してきました。また、関西には、24時間運用の国際空港をはじめ複数の空港、大規模港湾、国際会議場等の都市インフラが充実し、官公庁の地方機関や内外の防災関係機関、多くの企業の本社等が立地するなど、首都圏に次ぐわが国第二の中枢機能を有している地域です。さらに、関西には、日本銀行のバックアップセンターなど、現に首都中枢機能のバックアップを担う施設も立地しており、首都のバックアップを担うのにふさわしい機能を有しています。
  関西ならこうしたポテンシャルを活用することで、少ない投資で最も効果的に首都中枢機能のバックアップを担うことが可能です。
首都被災時に対応する関西のポテンシャル
政治・行政中枢機能も関西でのバックアップを

  金融・外交・報道など重要な中枢機能や民間企業活動を支えるため、関連した行政中枢機能についても、関西でバックアップを行い、民間活動と連携した施策展開することが合理的です。
  関西には、規模の大きい国の地方機関、バックアップオフィスとして活用可能なコンベンション施設やホテル等が多く立地しています。これらを拠点に①首都が壊滅的な被害を受けた場合は、関西でトータルに首都機能をバックアップし、また、②首都が部分的な機能不全に陥った場合は、首都圏に残った機能と関西で代替する機能が補完し首都機能の継続を図る必要があります。
  その際、関西は、公共施設・空間の確保や要員確保等について、官民挙げて積極的に協力を行うことが可能です。
  また、国会のバックアップ体制についても、早急に事業継続計画(BCP※)を策定すべきです。その際、国会移転議論とは切り離し、今緊急事態が発生しても、すぐ対応できるよう、既存の施設の活用を検討することが有効です。関西は、その期待に十分応えることができると考えられます。

※事業継続計画(Business Continuity Plan)
重大災害等により、通常の事業活動が不可能になった場合に、迅速に重要機能を回復するための対応策。国では、今年度中に省庁用のBCPガイドラインを策定予定。
参考 国への提案

大阪湾ベイエリアと首都機能のバックアップ
 大阪湾ベイエリアは、関西における各種の中枢機能が集積するエリアであり、関西が首都機能のバックアップの役割を担う際にも、その中心的役割を果たすべきエリアと考えられます。
  とりわけ、首都圏の空港や港湾が大きな被害を受けた場合、その最大の受け皿となるのは、ベイエリアに立地する関西国際空港をはじめとする複数の空港と神戸港、大阪港を中心とした関西の港湾となります。これらが物流のバックアップの役割を果たし、首都圏並びに全国各地との物資の輸送窓口として機能する必要があります。
  そのためには、関西国際空港の二期事業の着実な推進をはじめ、スーパー中枢港湾である阪神港の機能強化や、第二名神高速道路をはじめとする基幹道路の整備によりネットワーク機能の充実を図っていく必要があります。
  関西が首都機能のバックアップという国家的な役割を円滑に果たしていくためにも、大阪湾ベイエリア開発推進機構を中心に関係自治体・経済界が一体となって、大阪湾ベイエリアの開発整備がより強力に推進されることが期待されます。


写真提供:関西国際空港用地造成株式会社・神戸市

(2006年秋号)

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