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広報誌『O-BAY』
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蘇れ大阪湾
難しい。けれど再生は必要だ。
 
  Interview   上嶋 英機さん
〈独立行政法人産業技術総合研究所中国センター/産学官連携コーディネータ〉
上嶋英機さん◆うえしま ひでき
1944年生まれ。東海大学大学院海洋学研究科修了。1972年通商産業省工業技術院中国工業技術試験所に入所、1987年京都大学工学博士、1994年海洋環境制御部部長、2001年より現職。1997年から徳島大学大学院教授を併任。専門は海洋環境工学、ミチゲーション工学。

 平成15年7月、「大阪湾再生推進会議」が発足した。都市再生本部第3次決定のプロジェクト「大都市圏における都市環境インフラの再生」にもとづく大阪湾再生を進めるもので、今年度末までに行動計画をとりまとめ、16年度からは行動計画の推進とフォローアップを行う予定である。
  それにしても、大阪湾を再生するとは、いったい何をしようとするのか。 現実問題として、再生は可能なのか。……疑問を抱く人も少なくないだろう。瀬戸内海の環境の保全・回復に長年携わり、大阪湾再生にもさまざまな立場で関わる上嶋英機氏の答えも「その質問が一番難しい」だった。それでも、取り組むことが必要だという。大阪湾再生の意義、現状、課題をうかがった。
 
なぜ自然再生なのか
 沿岸域の再生というと、よく、人工干潟や藻場が例にあげられます。干潟の浄化能力を利用して、水質を改善するかのように聞こえます。効果が無いとは言いませんが、大阪湾に1日に流れ込む窒素は約180t。これを半減させるのには浅場や干潟の造成が、830km2必要だそうです。これは大阪湾の半分以上の面積に相当します。人工干潟づくりの費用はこれまでの経験で1m2あたり約2万円かかるとされているので、総費用はざっと17兆円。そんなお金がでる訳がない。それが現実です。
  では、再生なんて意味が無いのかというと、それは違います。20世紀、私たちは物質的な豊かさを求め、それを手に入れる代わりに、自然を壊してしまいました。「自然再生」という考えが出てきたのは、私たちにとって、一番、大切にすべきものの優先順位が変わったからです。物質ではない豊かさには、青い海、緑、きれいな空気が必要です。何か得することがあるから再生するのではなく、失ったものを取り戻したいという思いが出てきたのでしょう。
  ただし、相手は自然ですから、まったく同じものを再生するのは不可能ですし、新たな自然をつくるにしても長い時間がかかります。また、再生の目標は、どんな自然、どんな大阪湾でしょうか。若い世代は今の自然をそれほど悪いと感じていません。彼らは壊れる前の自然を知らないんですから。一口に再生と言っても、その言葉の持つ意味は、人それぞれで、コンセンサスは取れていない状態だと思います。
 
大阪湾は今どんな状態なのか
 大阪湾は今、同じ都市型の東京湾、伊勢湾と比べても、底質の状況が悪く、底生生物が非常に少ない状態です。毎年、冬でも、赤潮が発生していることがあるんですよ。報道されないので、みなさんご存じないと思いますが。そして、最近では、湾奥に青潮※1も発生しています。
  もちろん、昭和40年代に公害がひどく、排水規制も無かった時期に比べると、ずいぶん良くなっています。透明度が上がったという話もあります。しかし、新たに流れ込む負荷物質は規制ができても、すでに、海の中にストックされてしまったものが、再流出して循環しますからね。漁獲量もかなり落ちていますし、生き物が住む海としては、もう、ぎりぎりのところだと思います。
  なぜ、こんな状態になっているのか。その要因はたくさんあります。その一つに、大阪湾は埋め立てにより浅場等が消滅し自然海岸が数%しか残されていない。特に高度成長期からこれまでに約8,000ha近く埋め立てがなされ、海が沖合に追いやられた。
  さらに、ジェーン台風をはじめ、多くの台風が襲来して大きな被害が出て以来、大阪湾では台風に備えて直立岸壁の堤防をたくさんつくってきました。その結果、水深5m以下の場所が1,300haしかありません。東京湾の18,600haに比べて1割以下です。海で生き物が暮らすためには、浅場が不可欠なのですが、直立堤の下はかなり深いので、今からここを浅くしようとしても、実現は難しいでしょう。
  また、大阪湾に注ぐ河川の数が断然多いんです。それは、陸上の人間活動が海に与える影響が大きくなることを意味します。下水処理場からの排水もかなり多いですね。流入負荷はCOD※2で約350トン/日にもなります。
  巨大な埋め立て地にかこまれて、運河、人工水路が多く、防波堤、突堤も多数あります。これらによって囲まれた場所は、水が動かない「停滞性水域」になります。湾の奥のほうに多くあって、河川から流れ込む栄養塩、下水処理場からの排水を溜め込んでいます。そこから、赤潮が発生し、貧酸素状態が長時間つづくという悪循環が起こっているのです。
 
瀬戸内海の中の大阪湾
 大阪湾には、東京湾や伊勢湾とはまったく違う、大きな特徴があります。それは、瀬戸内海という広大な閉鎖水域の一部だということです。大阪湾再生を考える場合、特に、このことを忘れないで欲しい。実は、私は日々、それを実感しながら仕事をしています。というのは、この研究センターには、瀬戸内海大型水理模型があるのです。
  模型の大きさは230m×100m。水平縮尺が1/2000、鉛直縮尺が1/159で、5,000tの水が入ります。この巨大な模型は、昭和48年に完成しました。深刻化する公害問題を受け、瀬戸内海の水質汚染を防ぐための科学的研究を行うことが目的でした。とはいえ、この模型を完成させることは、「プロジェクトX」ばりの大仕事でした。
  まず、瀬戸内海は外海と繋がる開口部が3つあります。紀伊水道、豊後水道、そして関門海峡。潮汐の影響は、2つの開口部より3つの方が、はるかに複雑になります。人間関係も2人より3人のほうが複雑ですよね。瀬戸内海大型水理模型
  当時の海図には地形が示されていない部分があって、自分たちで測定もしました。瀬戸内海の潮がどう流れているのか、当時はその観測データもなく、水理模型でテストをしながら、現場で取ってきたデータと付き合わせる作業を延々と続け、調整を続けた結果、満足できる模型ができあがったのです。水理模型で鳴門海峡の渦潮を見ていただくことができますが、現場と同じタイミングで同じような渦ができるのは、この水理模型が実際の潮の流れをかなり忠実に再現していることの証だといえます。
  この大型水理模型で、紀伊・豊後水道から入った水が、ほぼ中央の燧灘(ひうちなだ)付近に到達するのに約6ヶ月、内海水の90%が外洋水と入れ替わるのに約1年半かかること。主な恒流と停滞性水域の場所など、瀬戸内海の基本的な水の流れがわかりました。また、具体的な汚染源から出た汚濁物質が、どのように拡散していくのかといった実験を行い、公害規制に役立ちました。
  現在は、水の流れを人為的に制御することで汚濁水域を改善する技術についての研究を行っています。大阪湾がかかえるもっとも深刻な問題のひとつが湾奥の停滞性水域ですからね。私は大阪湾再生には、干潟や藻場を作るというだけではなく、流れを制御するというダイナミックな技術も、必要だと考えています。
瀬戸内海大型水理模型の概要図
 
流況制御で埋め立ての影響を回避
 大阪湾では現在、神戸空港、六甲アイランド南、大阪南港沖の新人工島、関西空港拡張の4つの大規模埋め立て工事が進んでいます。この埋め立てによって、大阪湾の流れがどうかわるでしょう。
  4つの埋め立ての複合的な影響は、ほとんど検証されていません。それぞれ事業主が違いますからね。個別事業の影響も、瀬戸内海と分断した大阪湾だけを対象にし、その中で埋立地の周辺だけを重点的に、コンピュータシミュレーションなどで検証しているだけだったりします。
  この水理模型を見ている私たちは、複雑な地形の変化が流れにどんな影響を与えるのかは測り知れないし、実験を やってみないとわからないと感じるのですが、その変化を知らないと、恐れ知らずなことをやってしまうのですね。
  そこで、実際に、個別事業の影響と、複数を組み合わせた場合の影響を調べてみました。この4つの事業が行われる前と、事業が終了した後の流れを比べてみると、大阪湾の奥の水域で、停滞性が高まり、汚濁や赤潮発生がひどくなるだろうという結果になりました。
  さらに、埋め立ての影響を回避するための流況制御についても実験・研究を行っています。たとえば、明石海峡から大阪湾に入る流れを利用して、淡路島の北端から流れに垂直に突き出した、長さ2kmの構造物(導流堤)を作ってやると、4つの埋め立てを行う前よりも良くなるほど、潮の流れが劇的に変化するのです。長さ0.5kmでも十分効果が出ます。まずは実験として、さらに半分の250mで、すぐとりはずせる簡単な構造物でもいいんです。
  これは、事業としては難しいものではないし、非常に効果的だと思うのですが、すぐに、できないところに、大阪湾の再生における問題点があります。
 
大阪湾は誰のもの?
 明石海峡に導流堤をつくりたい。その時、誰の許可をとればいいのでしょう。この技術の効果は非常に広範囲に及びますが、それを承認できる人、組織が無いのです。
  海の自然再生をめぐる法律・施策は、今回の都市再生プロジェクトに加え、平成15年1月に施行された自然再生推進法があります。大阪湾をめぐる法律は、大阪湾臨海地域開発整備法はもちろん、昭和48年施行の瀬戸内海環境保全臨時措置法(昭和53年から特別措置法)もあります。
  都市再生プロジェクトは、都市からの論理で海を見ているので、自然再生にはならないという人もいますが、必要な事業費が確保できるなら、理念や手法はともかく早く取り組みたいものです。
  最近成立した再生関連法ではすぐ、「ボトムアップで事業案をあげてください」というのですが、現状のままではボトムアップは無理です。沿岸の自治体の数を考えても、調整不可能なのは明らかでしょう。大阪湾、瀬戸内海に統括的に取り組む自然再生の新たな組織体が必要なんです。
 
自然を大切にする文化
 大阪湾岸に住んでいる人は、大阪湾を、どう考え、何を望んでいるのでしょう。それを明確にするために、合意形成を行うことが一番大事で、難しいことかもしれません。
  そもそも私たちは、自然について、常日ごろから考えるという文化を無くしてしまいました。今、都市の暮らしに海は必要ない。だから考えない。かつての自然を知っている世代が、ちゃんと継承しなかったのが問題で、だから私は責任を感じて、旗振り役をしているわけですけれども。
  たとえば、小さな川は大きな川より、たくさん砂を運ぶのをご存知ですか。河口の干潟にとって大切な存在なのです。西宮に御前浜という干潟がありますが、この場所では、大切なのは夙川です。夙川が河口干潟を造っています。人工干潟を作るのもいいですが、こういう小さな川を守ることで、干潟は育つのです。どこからか持ってきた砂より、上流の山から運ばれた砂のほうがいいと思います。
  夙川は桜の名所として知られています。桜の木がお花見がしやすいようにと夙川の上を覆っています。川はコンク リートの3面体で、秋に川に落ちた葉っぱが全部、そのまま流れて河口に溜まり、そこで腐ってしまうんです。川の中に落ち葉が溜まる場所があれば、水中生物が分解してくれて、河口の干潟の栄養になるのですが。砂を運ぶという役割からも、用水路のような川は感心しません。1年の内のほんの一週間、桜を楽しむだけの川。それが大量の葉っぱの腐敗のために、干潟に与える悪影響を都市の人は知らない。結び付けて考えたことが無いのでしょうね。
  大阪湾には漁師さんはいますが、もう漁村は見あたりません。瀬戸内海のほかの海には、漁村がたくさんあって、それが海の秩序を作ってきたわけですが、大阪湾では、海の文化が継承されずに失われてしまった。都市型の湾を再生というときには、工学的な話より先に、海の文化を再生することから始めないといけないのかもしれません。
 
自然再生の3つの課題

 自然再生を実現するために解決すべき課題は3つあります。そのうち2つは、まず、「自然再生の定義、目的・目標」です。つまり、合意形成、自然を守るという文化を再生させることです。
  次に、「自然再生を推進するための仕組み・組織」です。誰に許可を取ってやるのか。誰が取り組みを評価するのか。その合意形成をどのように得るのか。
  そして、3つめが「環境修復・再生の技術」です。自然再生に使う技術は、さまざまなものが開発されていますが、まだ、育っていません。やってみたこともないのに、やれるような絵を描いていることも事実です。
  大阪湾では今、西宮の御前浜干潟や尼崎港で、集合的な技術を試行する場を作っています。その中で、実際に使える技術を見つけ、育てて行きましょうということです。
  技術を育てるためには、まず、試行や検証の段階に国のお金をつけること。それから後は、産業に結びつかないと自活できません。
  平成14年11月、広島県呉市で、「海洋環境産業」の見本市とシンポジウムを開催しましたら、全国から6,000人が、集まってくれました。この場所に、それだけの人数が集まるのは、すごいことですよ。この分野のポテンシャルとニーズを感じましたね。この見本市は、環境全般ではなく「海洋」に絞って行いました。陸上で動いている政策の「循環型社会」とか、ゴミの焼却灰とか、エネルギー活用とかの取り組みは、そのまま海に使えないことが多い。海は海で、環境のためになる、こんな技術、産業が必要だと提起しなければならないと考えたのです。
  産業分野を6つに分けて、提案していますが、その中で海洋環境修復・創造技術というのが、いわゆる再生技術です。この中に、工学的なことも、社会科学的なものもあるでしょう。
  海を再生するにはもっと色々な分野の産業が必要で、たとえば、海洋環境機能材料の開発。海に悪影響を与えていたものに代わる、代替材料の開発。材料開発と言ったら、最先端技術ですよね。海洋エネルギー開発や、海洋バイオ技術も、これから発達が期待される分野です。海洋資源を使って海洋浄化をする。たとえば、有機スズやダイオキシンを分解するバクテリアを活用するなど、これから重要になって行きますよね。
  海洋環境教育も大事です。これは、自然を守る文化の醸成や、合意形成のためにも、非常に重要です。

 海の再生に使えそうな技術はすでにたくさんあります。それを試すフィールドがあって、実証研究に国がお金をつけてくれれば、どんどん育っていくでしょう。いわゆる、実海域で各技術分野の集合体を創り、その効果検証を行う仕組みである、「フィールドコンソーシアム」が再生事業の前に、絶対に必要ですね。
  となると、あとの2つ、「自然再生の目的・目標」をあきらかにすること、「事業を推進する組織」をつくることが必要です。これには、工学・自然科学の専門家ばかりでなく、社会科学系の人や市民にも参画してもらわないといけません。
  難しいことではありますが、自然再生への取り組みを、ぜひ大阪湾からスタートさせてほしいと思います。危機に瀕する沿岸域は、他にもたくさんあるし、遠からず、アジア諸国での貢献が求められることになるでしょう。
  チャレンジ精神にあふれ、本音をぶつけあえる気風がある大阪・関西の取り組みに期待していますし、我々もできるかぎりのお手伝いをしたいと思っています。

 
※1 富栄養化によるプランクトンの大量発生で、底層に貧酸素水魂ができ、それが風等によって岸近くの水の表面に移動し、青色ないし白濁色を呈する現象。
※2 化学的酸素要求量(chemical oxygen demand)水中の有機物を酸化剤で化学的に分解した場合に消費される酸素量。水の有機汚濁を測る指標。



ちょっとウンチク  いろいろ話題の干潟です。

干潟といっても色々
 干潟とは、引き潮の時、波の下から現れる砂地や泥地。外海の影響を受けにくい内湾の河口域に多い。「前浜干潟」、「河口干潟」、「潟湖(かたこ)干潟」の3タイプがある。
  潮干狩りをするのは前浜干潟。干満の差が大きいほど広くなり、潮位差が5mにもなる有明海では非常に広大になる。逆に日本海側では潮位差が小さいので干潟は発達しにくい。
  海水域、汽水域の違い、また、砂質、泥質の違いもある。泥質干潟は、うかつに足を踏み入れると、体が沈んで身動きできなくなることも。素人は近づかないほうがよい。
干潟の3タイプ

変化に満ちた安定
 一口に干潟といっても、大潮の時だけ干出・水没する場所もあれば、毎日2回、出たり沈んだりする場所もある。川の水と海水が混じり、塩分濃度も色々ありそうだ。環境変化が激しくて、暮らしにくそうに見えるが、干潟は生物の宝庫である。潮干狩りの獲物であるアサリ、ハサミを上下させる動き(ウェイビング)が愛らしいシオマネキなどのカニ。シャコやエビ、ゴカイなどなど。
  干潟の環境は、結構、安定していて、地形変化はとても小さく、地下水(干潮時の海水面より高い位置に保持されている)の塩分濃度も変動が少ないのだという。
  川と海から流れ込む栄養分や汚濁物質は、バクテリアによって分解される。波が酸素をたくさん供給するのでバクテリアにとって快適な環境だ。これをゴカイなどの小さな生物が食べ、さらに大きな生き物の餌になる。最後は鳥や人間が有機物を干潟から外に持ち出すので、海や川から続々と栄養分が流れ込んできても大丈夫な仕組みだ。干潟が自然の浄化槽と呼ばれるゆえんである。

フライウェイネットワーク

 「昔から人々は、渡り鳥がやってくるのを見て環境の平穏無事を喜んだ。彼らは地球を縦走してパトロールしている警告者でもある(「干潟は生きている」1980年 栗原康 著)」 旅路のどこかで干潟が失われたら、渡り鳥は旅を続けることができない。インターネットも人工衛星も無かった時代のほうが、人は地球規模の環境問題に敏感だったのかもしれない。
  今、渡り鳥にとって重要な湿地を保全する国際的な取り組みがある。「アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」。そのシギ・チドリ類の「フライウェイネットワーク」には、発足時から徳島市の吉野川河口干潟が、2003年9月に大阪市の南港野鳥園が指定されている※。
  干潟の消失はそこで一生を送る小さな生物たちにとっても大問題である。微妙な環境で生きる彼らは、遠くの干潟に簡単に引っ越すことはできない。独特の進化をとげた固有種も多く、干潟が消えれば一緒に絶滅する運命にある。調べが進んでいない生物も多く、1989年になってもカニの新種が見つかっている。姿かたちはヤマトオサガニなのにウェイビングが違う新種のカニは、ヒメヤマトオサガニ(Macrophthalmus banzai)と名づけられた。どんなウェイビングをするか、わかりますね?


大阪湾の干潟たち
 大阪湾ベイエリアで有名な干潟というと、和歌川の河口に広がる和歌の浦だろう。万葉人にも愛された美しさを誇る。
  大阪湾では江戸時代から盛んに埋め立てが行われ、干潟の多くが消失してしまった。干潟などまったく残っていないと思っている人もいるかもしれない。
  けれど、泉南市の男里川、赤穂市の千種川、高砂市の加古川などの河口には、まだ干潟は残っている。
  淀川河口にも干潟があり、食用にできるシジミが獲れ、水鳥もたくさん飛来するのだ。西宮では、埋立地や堤防に囲まれた水域の御前浜、甲子園浜に干潟が残る。小さくて、何かあればすぐにも消えてしまいそうな干潟だが、都市の近くにある、小さな自然を失ってはならない。

※(参考) http://www.chidori.jp/education/begin/network/index.html



そこに生きる人 「昔の海に戻す」
  音揃政啓
さん
  魚庭(なにわ)の海づくり実行委員会代表
 
音揃政啓さん「漁師は海を肌で感じています。今まで海の恩恵を受けてばかりでしたが、昔の海の状態に戻そうと海を育てる活動をしています」と語る音揃さん。大阪湾で働く漁師さんたちが取り組む「魚庭の森づくり」「魚庭の海づくり」についてお話を伺った。
 
漁存続の危機が来る日も近い

 私は4代続く漁師の家で生まれました。幼い頃の大阪湾は、砂浜も多く豊かな海でした。私が漁師となった25年前でも、今より見た目は汚かったが、魚ははるかに多かった。当時は夏になると海が赤くなるんです。これは植物性のプランクトンが同時に大量発生する時の色で、魚がわくように寄ってきました。それくらい海に栄養があったんです。今は見た目には以前よりきれいですが、栄養の少ない海になっています。山の土壌が痩せてしまったことや、化学物質や生活廃水の流入、埋立による潮流の変化などが原因です。
  大阪府には約1,600人、岸和田だけでも100人の漁師がいますが、資源保護のため漁の時間も制限しています。息子は跡を継ぐと言ってくれますが、このままでは心から継いでくれと言えません。魚庭の海づくり大会すでに遅い気もしますが、それでも今から未来を見据えて何かやっていかなければ、本当に海がダメになるという思いです。

豊かな海の再生に向けて
 そこで、豊かな海を取り戻そうと、大阪府水産課の呼びかけのもと、2001年から府内の漁業者の若手で取り組んでいるのが「魚庭の森づくり」です。海の再生には水の栄養源となる上流の山づくりからと、下草刈りや枝打ち、植樹などに取り組んでいます。下流では「魚庭の海づくり」に取り組んでいます。これは年に数回海底や河口などの清掃をしています。漁業者が、「漁師は海のまもり人」を合言葉に、大阪湾の美化と環境改善を府民に呼びかけるイベントが「魚庭の海づくり大会」です。一人でも多くの方に海に目を向けてもらうこと、そして身近にできることからやってほしいという思いを込めています。
  このイベントでは、鮮やかな大漁旗、啓発横断幕を掲げた40~50隻の漁船による海上パレードや、海底から引き上げたゴミの展示、清掃活動などを行っています。昨年夏の見学者は200人程度でしたが、ご覧になった皆さんが特に驚かれるのはゴミの展示です。家電製品や建築廃材、車にバイク、自販機、ナイロン、ペットボトル、煙草のフィルターなどなど。海はゴミ捨て場ではないと叫びたくなるあり様です。漁をしている時、こういうゴミのために網があがらず、大損害を被ることもあります。
  これらの活動をしていますが、すぐに結果が出るものではないので、長期的な視点で継続していくのが大変です。やって意味があるのか、しんどいだけではないのかという人も少なくはありません。それでも、ひとりでも多くの人に、海の現状や改善のための取り組みについて知っていただきたいと思っています。
 
人が壊した循環を取り戻す
 元々自然は循環していました。それを壊したのは人間です。魚が卵を産むための浅瀬や砂浜も少なくなりました。水産試験場が稚魚を放流していますが、それとともに、卵を産める環境の再生が重要でしょう。空いたままの埋立地などは直立岸壁を取り払い、斜めにするだけで、自然に藻が生え魚が寄ってくるでしょう。森も原生林のようにしてやれば土も肥えてくるでしょう。大学や研究機関でも様々な研究が進められています。昔のようにもっと豊かな恵みをもたらす海を取り戻すためにそれぞれができる努力をしていくことが大事だと思っています。

◆おんぞろ まさひろ
1960年岸和田市生まれ。1978年から漁業に従事。1998年5月岸和田市漁協青年部部長に就任、2002年3月部長を退任。2003年5月から大阪府漁協青壮年漁業者連絡協議会会長に就任、現在に至る。




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